私は若い頃から神社仏閣巡りが好きでした。
幸いにも家業が大工でしたので必要な建築・木工技術を持っていたため、趣味的感覚で流れ宮や祠を造っていました。
流れ宮はともかく、祠や簡単な社(やしろ)などは昔は親方の指導で見習い大工が造っていたような製品でした。
ただ最近の大工さんはハウスメーカーの依頼で必要な材料を提供されて家を建てる場合が多く、
手持ちの材料で気軽に作品を造れる環境ではなくなってしまっているのです。
このように祠の造り手が減ってきたという状況を鑑みて、
工房大五郎として、祠宮(ほこらみや)という商品を本格的に取り扱うようになりました。
現在は住んでいる母屋の改築や建て替えの際に、神様の住まいである祠も一緒に新しくしたいというお客様の需要が多いです。
しかしながら家を建てる専門の大工がお客様から依頼を受けて一棟だけ祠を造るとなると、
材料の無駄や人件費がかかりすぎてどうしても高価になってしまいます。
そこで工務店やハウスメーカーが工房大五郎に祠宮の注文をしてくるのです。
工房大五郎は祠を専門的に制作しているわけですから、材料や手間の無駄も少なくなり結果として販売価格も下がります。
私はお客様を紹介してもらい、工務店も手間が減り、お客様は安価で良質な祠を建てられるのですから、
みんなが幸せになる仕事だと誇りを持っています。
工房大五郎の取り扱う商品で自在鉤という器具があります。
囲炉裏の上部に掛けて利用する製品なのですが、これは天然の素材を探し歩き、すべて手作業で加工しています。
そのため同じ製品は二つとしてありません。二度と同じものは作れません。
自分の手の感覚と自然の素材の組み合わせで原木から製品が浮かび上がってくるわけです。
特に自在鉤の上部に配置する魚の彫刻(横木)を彫っている時が一番楽しいですし、完成した時の喜びは大きいです。
これだけ魂を込めた製品なので、興味を持って問い合わせしてくれたお客様には可能な限り実際に見に来て頂いています。
不思議なもので見に来てくれたお客様は少しでも良い物を欲しくなるようで、当初よりワンランク上の商品を購入されることが多いです。
商売としては有難いのですが、本当は高価な商品ほどずっと手元に置いておきたいのです(笑)
昔は商売をしている人や大きな農家は神社から分霊してもらい、自宅の庭に祠を建てる文化がありました。
しかしながら、現在は自宅に祠を新しく建てる人はほとんど居ません。
そう考えると確かに先細りの仕事かもしれませんが、先細る状況以上に職人が減っているのが現状です。
そして職人はどちらかというと立派な流れ宮などを造りたがる傾向があります。
立派な建造物は技術力を見せられるので自己満足もあり造っていて楽しいのですが、
シンプルなお社(やしろ)や祠を造る人は意外と少ないのです。
確かに立派な流れ宮等を造りたくないと言ったら嘘になります。
でもシンプルでリーズナブルな祠を求めている人も存在します。
また、凝った製品はどうしても時間がかかるので、製作期間中は他のお客様の注文を受けることもできません。
祠宮や囲炉裏、自在鉤の製作は全て自分一人でやっているので、注文を受けられる絶対量は決まってしまいます。
自分の出来る範囲の仕事をしっかりと行い、
目の前のお客様の期待に応えることが自分の役割だと思い、日々、商品を製作しています。
囲炉裏・自在鉤・火棚製作販売「工房 大五郎」代表。
大工で培った木工技術を活かし、祠や囲炉裏、自在鉤など日本古来の建造物を中心に制作。
木工技術だけでなく、独自に習得した板金技術、塗装技術や彫刻技術を組み合わせてお客様の要望にあわせて提供している。